イリジウムシステム

66基の低軌道周回衛星からなる通信システム
『イリジウム』

イリジウム・コミュニケーションズ社(米国バージニア州)が運用するイリジウム衛星通信システムは、 地球上のあらゆる場所で安定したデータ通信サービスを提供します。

イリジウムシステムでは、ある利用者端末宛てのデータは、衛星から隣の衛星へと渡されていき、 その端末と通信できる上空の衛星に達してから、地上に向けて送信されます。 イリジウムネットワークは両極を含む世界中をカバーします。

キュービック・アイは2016年から通信事業者として総務省の認可を受け、SBD、RUDICS、CSDの3種類のM2M用データ通信サービスと、 PILOTブロードバンド通信サービスを提供してきました。 2022年からは、イリジウム次世代衛星を用いたより高速・大容量のCertus(サータス)サービスも提供しています。

SBD

イリジウムSBD(Short Burst Data)サービスは 小容量データを効率的に送信することができるネットワークプロトコルです。 独自のネットワークプロトコルを用いて遠隔地の端末とメッセージを送受信します。 移動体が発信するメッセージ(MO・SBD) と移動体に着信するメッセージ(MT・SBD)が利用できます。

  • 小容量データの送受信に適する
  • 最大MOメッセージサイズ: 340バイト
  • (9602, 9603モデムの場合)
  • 最大MTメッセージサイズ: 270バイト
  • (同上)
  • メッセージにはイリジウムのドップラー計算位置が付属 (最良精度1 km/ 80%が10 km以内)
  • データはEメールの添付ファイルとして配信
  • データ受信者として5つまでのアドレスを指定可能
  • サービス利用料は送受信されたデータ量に応じて課金

RUDICS

イリジウムRUDICS(Router-based Unrestricted Digital Interworking Connectivity Solution)は、 CSDで用いる電話回線の代わりに、インターネット回線(TCP/IP)を利用する通信です。 RUDICSでは、End To End でデジタル回線を用いるため、アナログ音声信号を介したCSDに比べ安定した通信が可能であり、 SBDよりも大きなデータが送信できます(一回の通信で数十キロバイト程度)。また、受信側ホストはインターネット上の IP通信で受信するので、同時に複数の端末と通信できます。
電池やソーラーで稼働するプラットフォームで、最も多くのデータを送信できる通信方法です。

RUDICSを利用するには、あらかじめ、イリジウムGatewayに利用者専用のアカウントを開設して おく必要があります。このアカウントには、そのアカウント用の電話番号と、データフローをルーティング する宛先IPアドレス/ポート番号がひも付けられます。端末がその番号にコールしてGatewayに着信すると、イリジウムGateway は、着信した回線をインターネットに接続し、受信データをそのまま登録されたIPアドレス/ポート番号に宛てて流します。受信側ホストは、 そのIPアドレス/ポート番号に向けて送られてくるデータを待ち受けている必要があります。

  • 双方向連続通信
  • 実効通信速度: 6 ~ 10キロバイト/分
  • イリジウムモデム(9522Bまたは9523)からゲートウェイに着信したデータを、インターネット(TCP/IP)を通じて利用者のホストサーバーに伝送
  • サービス利用料は通信時間に応じて課金
  • SIMカード(およびそのアクティベート)が必要

Certus100 / Certus200

イリジウムCertus100サービスとCertus200サービスは小型の端末で 従来のイリジウムSBD・RUDICS・CSD通信より高速なIPデータ通信と高品質音声通話を実現します。 遠隔地の無人プラットフォームとの通信の他、 船上での小型機材によるデータ通信・音声通信が必要な場面にも適しています。

  • 小型の端末による大容量データ通信に適する
  • Certus 100通信速度:上り最大22 kbps, 下り最大88 kbps
  • Certus 200通信速度:最大176 kbps
  • 高品質音声通話(Certus100:2回線、Certus200:3回線まで)
  • SIMカード(およびそのアクティベート)が必要
  • サービス利用料は通信データ量・音声通話分数に応じて課金

CSD

CSD(Circuit Switched Data)サービスではイリジウムのダイアルアップ機能を使用して 比較的容量の大きなデータ(数十キロバイト)の送信ができます。 イリジウムデータ端末が公衆電話回線 (PSTN)上のある番号、または別のイリジウムデータ端末宛てに発呼し、 接続された回線を通して約2400 bpsで通信します。

サービス利用料は送受信するデータ容量に比例する通話時間に応じて課金されます。

  • 双方向連続通信(ダイヤルアップ方式)
  • 実効通信速度: 6 ~ 10キロバイト / 分
  • イリジウムモデム(9522Bまたは9523)と相手側モデム間を電話回線で接続し、音声信号によりデータ伝送
  • サービス利用料は通話時間に応じて課金
  • SIMカード(およびそのアクティベート)が必要

CSDでは通信時に受信ホスト側の回線を占有するため、受信ホストは同時に1台の端末のみと通信可能です。 また、公衆電話回線を使用して日本にある受信ホストに着信させる場合には、国際電話回線の音声信号 を使用した通信となるため、通信が不安定となる場合があります。そのため、新規のシステムの設計に あたっては、複数の端末からの着信を同時に受信でき、地上回線では安定したIP通信を使用するRUDICS 通信の検討をお勧めします。
また、CSDを使用し、日本の受信ホストに着信させたい場合には、着信側回線として公衆電話回線ではな くイリジウム回線を使用する通信を推奨いたします。

PILOT

イリジウムPILOT(パイロット)は海洋でのブロードバンド通信のソリューションです。 SBD、RUDICS、CSDの主な用途が、無人のプラットフォームからのデータ伝送であるのに対し、PILOTは 船上などでの人間による利用を主な用途としています。

PILOTは、最大134 Kbpsのインターネット接続と、音声通信(同時に最大3回線まで利用可能)が利用できる イリジウムOpenPortブロードバンドサービスを提供します。 イリジウムPILOTは、強烈な日射や極低温環境、波の荒い海洋など、厳しい気象環境下でも使用可能であるため、 通信の維持が必要不可欠であるようなときに、バックアップの通信手段としても利用できます。 OpenPortサービスは、お客様のニーズとご予算に合わせてお選びいただけるよう、データ・音声通信プランを各種ご用意しています。

ハードウェアとしては、専用のイリジウムPilotキットを使用します。

Certus700 / Certus350

イリジウムCertus700およびCertus350はPILOTの後継にあたるブロードバンド通信のソリューションです。 船上などでの人間によるインターネット接続や音声通話利用を主な用途としています。

  • Certus 700通信速度:上り最大352 kbps, 下り最大704 kbps
  • Certus 350通信速度:最大352 kbps
  • 高品質音声通話(3回線まで)
  • SIMカード(およびそのアクティベート)が必要
  • サービス利用料は通信データ量・音声通話分数に応じて課金